米国で香港人権・民主主義法案成立、中華人民共和国政府及び香港政府が反発

アメリカ合衆国で「香港人権・民主主義法」が成立した事態を受けて、香港では、11月28日、デモを支持する市民が喜びの声を上げた。同法が民主主義を求めるデモ隊にとって強力な後押しとなる一方で、中華人民共和国や香港政府にとっては、区議選での民主派圧勝に続く逆風となった。

デモ参加者の多くが使うインターネットの掲示板では、11月28日、「トランプ米大統領と米国の議員に感謝する」などといった発言が相次いで投稿された。香港島中心部では、同法成立へ感謝の意を示すための集会も呼び掛けられた。

香港の民主化運動で米国へ感謝の意を表するためコスプレに挑む香港市民
米国へ感謝の意を表するためコスプレに挑む香港市民
引用元:時事ドットコム

現実問題としては、米国が実際に香港に対する関税などの優遇措置を見直すことは、対中関係や米企業への影響を考慮すると困難である。しかし、その一方、中華人民共和国や香港政府の高官らに対して米国への入国拒否や米国内の資産凍結といった制裁を発動することは比較的容易なのではないかとの見方があり、香港市民の間では、そうした個別の制裁を発動してほしいとの声が強くなっている。

これまでデモに複数回参加してきた、ある30代の女性は、林鄭月娥行政長官ら、多くの政府要人の親族が英国籍を持っていたり、英国在住であったりする点を考慮して、「英国などヨーロッパ各国も同様の法律をつくってほしい」と訴えた。

2014年の「雨傘運動」の元学生団体リーダー、黄之鋒氏は、「アメリカ合衆国の動きは各国にドミノ効果をもたらすだろう。さらにその上、英国が行動を起こすとなれば、中華人民共和国政府や香港政府当局者や高官、官僚への圧力になる」と語った。

黄之鋒
米国議会での証言に臨む香港民主化運動元学生団体リーダー、黄之鋒氏
引用元:時事ドットコム

香港政府は11月28日朝、「(香港人権法は)香港とアメリカ合衆国双方の関係性と利益を破壊するものだ」として「強烈な反対」を表明した。同法は「香港の人権や民主主義とは無関係であり、デモ参加者へ間違ったシグナルを発するものである」として批判した。同時に、アメリカ合衆国が香港に対してこれまで認めてきた優遇措置をこれからも維持するように求めた。

さらに、中華人民共和国政府は、トランプアメリカ合衆国大統領が「香港人権・民主主義法案」に署名、成立させたことを受け、中華人民共和国外務省の楽玉成次官は11月28日、アメリカ合衆国のブランスタッド駐中華人民共和国大使を呼び、同法の成立に対して「激しい憤慨と断固とした反対」を表明して抗議した。アメリカ合衆国側が香港への介入を着々と進めるのに対し、中華人民共和国側は何らこれと言った打つ手がほとんどない状態であり、報復措置をちらつかせて対抗姿勢を示すのがせいぜいであり、必死になってもがいている。

楽玉成
中華人民共和国外務省の楽玉成次官(2019年10月22日北京)
引用元:産経フォト

中華人民共和国外務省の耿爽副報道局長は11月28日の記者会見で「香港の事は中華人民共和国の内政であり、いかなる外国政府や外国勢力も口出しする権限を持たない」とアメリカ合衆国政府を批判した。中華人民共和国政府の出先機関、香港連絡弁公室も、同日、声明を発表し、「最も強烈な非難」を表明した。

耿爽副報道局長
記者会見する中華人民共和国外務省の耿爽副報道局長=11月28日、北京(共同通信)
引用元:産経ニュース

これに対して、ある香港市民は、「馬鹿犬がワンワン吠えているだけ」と嘲笑した。インターネットの掲示板でも、中華人民共和国政府や香港政府をあざ笑う発言が相次いでいる。

同法に基づき米側は、香港の高度な独立性と自治が維持されているかを毎年検証。その結果次第で米国が「一国二制度」の香港に認める関税やビザ(査証)発給などの優遇措置を見直すため、香港を金融や貿易の拠点として利用してきた中華人民共和国にとって不利益となる可能性がある。

中華人民共和国の習近平国家主席は今月12月4日、香港の林鄭月娥行政長官と会談し、デモ隊の取り締まりを要求した。中華人民共和国は、香港の民主化運動を鎮圧するためには強権発動も辞さない方針だが、米法成立は大きな「足かせ」となり、デモ隊が勢いづくことが予想される。国務院香港マカオ事務弁公室は11月28日の声明で、アメリカ合衆国を「香港を混乱させる最大の黒幕」と呼んで、批判した。

楽玉成
中華人民共和国外務省の楽玉成次官(2019年10月22日北京)
引用元:産経フォト

中華人民共和国はアメリカ合衆国での同法の成立を阻止できなかったが、今後は同法の運用状況を注視する方針である。楽次官は「この法律を実施してはならないね」と強調し、「アメリカ合衆国の誤った措置に対して中華人民共和国は必ず断固反撃し、それによる一切の結果はアメリカ合衆国が完全に責任を負うあるね」と述べた。

楽玉成
中華人民共和国外務省の楽玉成次官(2018年ジュネーブ)
引用元:時事ドットコム

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